日本三大寺>大安寺、元興寺、弘福寺
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最終更新日:2016/08/24
神社・仏閣
日本の寺院のうち、仏教伝来以来の古い歴史を持ち、そのなかでも格の高いものを日本三大寺と称します。いずれも初期の日本仏教の発展に大きな役割を果たしましたが、現在では衰微してしまっています。
大安寺(大官大寺)
大安寺(だいあんじ)は、奈良市の中心部にある高野山真言宗の寺院です。聖徳太子の創立といわれ、本尊は十一面観音です。現代は衰えていますが、奈良時代から平安時代初期にかけては大寺院として隆盛を誇っていました。
聖徳太子の意向により、田村王子(舒明天皇)が熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)を改修し本格的な寺院としたものが、大安寺のはじまりとされています。639年に建築がはじまったこの寺は百済川(くだらがわ 現在の平野川)のあたりにあったことから百済大寺と呼ばれ、四天王寺や法興寺とならぶ最古の仏教寺院であり、官寺(かんじ 国家の庇護と監督を受ける寺)としても最初期のものでした。673年に高市に移転し高市大寺と改名し、677年には大官大寺という名称となりました。
平城京への遷都により、大官大寺も移転して大安寺へと改名されました。この時代は元興寺とともに三論宗の二大潮流を形成し、当時の仏教の中心となりました。平安京への遷都後は、空海が別当にされるなどしましたが、そのころの仏教のトレンドは密教へと移ったために衰退することとなり、火災などが相次ぎ衰退してしまいました。1596年の地震では、ついに小堂ひとつのみとなってしまいました。
元興寺(飛鳥寺)
元興寺(がんごうじ)は奈良市にある寺院で、日本最古の本格的仏教寺院である法興寺(ほうこうじ)がその前身となります。日本三大寺のなかでは唯一、往時の面影を残す寺でもあります。
法興寺の創建は、587年に蘇我馬子(そがのうまこ)が建立を発願したものです。馬子は仏教排斥派である物部守屋(もののべのもりや)と対立していたため、その戦勝祈願のために飛鳥に寺を建てたものといわれます。飛鳥に建てた寺なので、飛鳥寺(あすかでら)の名でも呼ばれるようになりました。
710年の平城京への遷都に際し、法興寺は奈良へ移転し元興寺となりました。元興寺は法相宗(ほっそうしゅう)と三論宗(さんろんしゅう)の道場として栄え、東大寺や興福寺と並ぶ大伽藍を擁する巨大な寺院となりました。しかし、10世紀以降は次第に衰退してしまい、荒れ果ててしまいました。寺の修復のために、寺宝である琵琶を売却したという記録が残っているほどで、その困窮ぶりがうかがい知れます。
平安末期になると曼荼羅が信仰を集めるようになり、元興寺で曼荼羅を祀っていた極楽坊が独立して極楽院として発展するようになります。そのため、現代では元興寺という名前の寺院は2つあり、極楽院の後進である智光曼荼羅を本尊とする真言律宗の元興寺と、衰微した元興寺が東大寺の末寺となった寺で華厳宗の十一面観音を本尊とするものです。
また飛鳥寺の方も本元興寺として残り、勢いは衰えたとはいえ現在に残っています。
極楽院の後進である方の元興寺は世界遺産「古都奈良の文化財」の一部となっており、多くの文化財を擁します。本堂、全室、五重小塔が国宝に指定されており、特に五重小塔はかつて存在した五重塔を忠実に再現した高さ5.5メートルほどの模型であり、奈良時代の五重塔の建築構造を伝える史料として非常に貴重です。
弘福寺(川原寺)
弘福寺(ぐふくじ)は、奈良県高市郡明日香村にある寺で、かつての川原寺(かわはらでら)の金堂跡になっています。川原寺は飛鳥寺、薬師寺、大官大寺とならんで飛鳥の四大寺とされた大寺院でした。
川原寺の創建時期はわかっておらず、7世紀半ばの天智天皇の時代に建立されたといわれていますが、『日本書紀』には記述がなく、謎の大寺といわれています。平城京遷都の際に他の4大寺と違って飛鳥から移転しませんでしたが、平安時代末期の1191年に焼失してしまい、往時を偲ばせるものは残っていません。
川原寺は跡地のほかは弘福寺しか残っていませんが、発掘調査ののち南大門や中門などの位置がわかるように史跡として整備されています。
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